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アスベストとは
アスベストとは、別名「石綿(いしわた)」と呼ばれる酸塩鉱物のことです。おもに、建物の保温断熱などに使用されます。
アスベストそのものは有害ではないものの、飛散しているアスベストを人間が吸い込んで体内に入ると、肺の疾患を発症しやすくなってしまいます。
具体的には、アスベスト肺、肺がん、悪性中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などの疾患が挙げられます。
2020年3月に改正が決定された大気汚染防止法により、より強固にアスベストの人体への影響を防止するために、アスベストの規制が強化されることとなりました。
改正以前もアスベストの規制はなされていましたが、これまでの調査方法では、不適切な処理によってアスベストが飛散する事例が確認されていました。
たとえば、解体工事前の調査時における石綿含有建材の見落としや、除去作業時の石綿含有建材の取り残しといった不適切な事例です。
対策が不十分な場合には、直接罰を課せられることもあります。そのため、事前調査の結果報告をすることは非常に重要な工程なのです。
調査結果の報告の義務化
大気汚染防止法の改正により、一定以上の規模の工事を行う際には、事前にアスベスト調査の結果を報告することが義務付けられました。調査結果の報告は電子システムや書面にて都道府県宛に行います。
また、仮にアスベストが使用されていなかった場合にも報告義務があります。
調査結果の報告で注意すべき点は、複数の事業者が同一工事を請け負っている場合です。このような場合には、元請事業者に報告義務があります。
報告対象
アスベスト事前調査では、結果を報告すべき建築物や工作物の条件がおもに4つ定められています。
1つ目は、建築物を解体する作業を伴う建設工事であって、作業対象となる床面積の合計が80平方メートル以上である場合です。
2つ目は、建築物の改造または補修する作業を伴う建設工事であって、作業の請負代金の合計額が100万円以上である場合です。
3つ目は、工作物の解体、改造または補修する作業を伴う建設工事であって、作業の請負代金の合計額が100万円以上である場合です。
また、ここで示す請負代金の合計額とは、材料費も含めた作業全体の請負代金の額のことで、消費税を含みます。事前調査の費用は含まれません。
4つ目は総トン数が20トン以上の銅製の船舶の解体または改修工事を行う場合です。
上記の条件に該当する場合には、元請業者が石綿含有建材の使用の有無についての調査結果を各都道府県に報告する必要があります。すべてのアスベスト含有建材が規制対象になったことで、調査の対象も大きく拡大されることとなったのです。
工作物
工作物に該当するものには、反応槽、加熱炉、ボイラー、圧力容器、配管設備、焼却設備、煙突、貯蔵設備、発電設備、変電設備、配電設備、送電設備、トンネルの天井版、プラットホームの上家、遮音壁、軽量盛土保護パネル、地下鉄の駅の地下式構造部分の壁および天井板、観光用エレベーターの昇降路の囲いなどがあります。
調査者の条件
アスベスト事前調査者には、条件が定められています。
まずは、建築物の解体工事の事前調査についてです。調査者の条件は、厚生労働大臣が定める建築物石綿含有建材調査者講習の修了者または、令和5年9月までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者です。
次は、船舶の解体工事の事前調査についてです。調査者の条件は、船舶石綿含有資材調査講習の修了者です。
最後に、工作物の解体工事の事前調査についてです。調査者の条件は、工作物石綿事前調査講習の修了者です。令和8年1月1日以降は、環境大臣が定めた資格者が行う必要があります。
建築物石綿含有建材調査者講習
建築物石綿含有建材調査者講習では、2日間の座学を通じておもに4項目の知識を学びます。
第1項目は、関連法令や石綿の関連疾患とリスクについて、第2項目は、建築物の構造・建材等に関する知識についてです。第3項目は、通常の使用状況における建築物の石綿含有建材に関する調査について、第4項目は、解体作業等においての事前調査にも対応した知識を学びます。
日本アスベスト調査診断協会
日本アスベスト調査診断協会は、アスベスト対策の専門家の集団です。
これまで広範囲に渡って形を変えて使用されてきたアスベストを、一部の知識で対応することには限界があります。そのため、調査、処理、健康被害、法律などの各分野の専門家たちが集まり、知恵を出していくことになりました。
幅広い知識をもとに、これからのアスベスト被害を防ぐために活動をしているのです。
船舶石綿含有資材調査講習
船舶石綿含有資材調査講習は、一般財団法人日本船舶技術研究協会が提供する、テキスト、ビデオ、マニュアルを通して行われます。
また、学科講習や修了考査を、全国8ケ所で実施しています。
工作物石綿事前調査講習
工作物石綿事前調査講習は、石綿等が使用されているおそれが高い特定工作物のうち、建築物とは構造や石綿含有材料が異なり、調査にあたり工作物についての知識を必要とする工作物として定められた炉設備、電気設備、配管及び貯蔵設備の事前調査を行う際に必要となる資格です。
講習は2日間に渡ります。1日目は、工作物石綿事前調査に関する基礎知識と、石綿使用に係る工作物図面調査について学びます。2日目は、現場調査の実際と留意点と工作物石綿事前調査報告書の作成について学びます。最後に筆記試験を行い、6割以上の正答率で合格です。
結果報告方法
アスベスト事前調査に関する調査結果の報告は「石綿事前調査結果報告システム」で行います。令和4年4月1日から上記のシステムを利用した報告が義務付けられていますが、システムを利用できない方は紙様式による報告も可能です。
石綿事前調査結果報告システムの利用には「gBizID」への事前登録が必要となります。システムの詳しい利用方法については、厚生労働省のYouTubeチャンネルを参照してください。
石綿事前調査結果報告システム
石綿事前調査結果報告システムとは、厚生労働省と環境省が定めているシステムです。労働安全衛生法にもとづく石綿障害予防規則や、大気汚染防止法にもとづく石綿含有の有無の事前調査結果の報告手続きや報告申請をオンライン上で行うことができます。
システム操作に関する問い合わせは、フォームおよび電話にて受け付けています。
gBizID
gBizIDとは、石綿事前調査結果報告システムを利用するために必要な認証システムアカウントです。
gBizIDでアカウントを取得すると、複数の行政のサービスにアクセスすることが可能になります。
報告期限
アスベスト事前調査の結果報告については、事前調査後に速やかに行う必要があります。遅くとも、解体等の工事に着手する前までには報告しなければなりません。
報告事項
報告事項は、解体等工事の発注者・元請業者・自主施工者の氏名・名称・住所です。法人の場合は、その代表者名も必要です。また、事前調査を終了した年月日・工事場所・工事概要・工事の実施期間・解体する建物の床面積の合計などがあります。
以下の事項も基本的には報告が必要ですが、建築物等が設置された工事着手年月日などから、明らかにアスベストが含有されていないと判明した場合には不要となります。
設計図書等に記載されている設置年月日よりも明らかにアスベスト非含有と判明せず、事前調査を行ったとき、その調査を行った者の氏名および登録規定に基づく講習を受講した講習機関等の名称の報告も必要です。また、改造や補修工事にかかる作業の請負金額の合計額・建築材料の種類などもあります。