
建物の解体や改修工事を行う際には、アスベスト(石綿)の有無を確認する「事前調査」が義務付けられています。しかし、すべての工事がこの調査の対象となるわけではありません。そこで本記事では、どのような場合にアスベスト事前調査が免除されるのか、その具体例や注意点について紹介します。
アスベスト事前調査とは?基本の流れをわかりやすく解説
建物の解体や改修工事を行う前に必要となる「アスベスト事前調査」は、建材にアスベストが使われているかどうかを確認するための大切な調査です。以下では、アスベスト事前調査の基本的な流れを4つのステップに分けて紹介します。
図面や記録を確認する
まずは、建物の設計図や施工記録などをもとに、アスベストが使われている可能性のある建材を特定します。過去の資料をていねいに確認することで、現地調査の精度を高めることができ、効率よくリスク箇所を洗い出すことが可能です。
現地で確認する
次に、実際に建物を訪れて外観や内部の建材を確認する作業です。書面調査で得られた情報をもとに、アスベストの疑いがある部分を目視でチェックします。書類だけではわからない新たなリスクが見つかることもあります。
必要に応じて分析する
目視でも判断がつかない場合には、分析調査が行われます。疑わしい建材を採取し、専門機関でアスベストの有無を科学的に分析するのです。なお、分析を行わない場合は、その建材を「アスベスト含有」とみなす決まりがあります。
調査結果をまとめる
最後に、これまでの調査結果をもとに報告書が作成されます。この報告書には、アスベストが含まれている建材の位置や種類、安全対策の必要性などが記載されています。工事を安全かつ適切に進めるための重要な資料といえるでしょう。
アスベスト事前調査が不要なケースとは?調査が省略できる具体例
アスベスト事前調査は多くの工事で必要ですが、すべての作業が対象になるわけではありません。使用される材料や作業の内容によっては、調査が不要となるケースもあります。以下では、アスベスト事前調査が不要とされる代表的なケースを4つのパターンに分けて解説します。
明らかにアスベストを含まない素材
木材・金属・ガラス・石など、アスベストを含む可能性がないと明白にわかる素材で構成された建材は、事前調査の対象外です。畳や電球の取り外しなど、アスベストの飛散リスクがない作業も同様です。
軽微な作業による工事
釘抜きや釘打ちなど、材料にごくわずかな損傷しか与えない作業も、アスベストの飛散リスクがないため調査が不要とされています。たとえば、釘だけで部材を取り外す工事などが該当します。ただし、電動工具などで穴を開ける作業は対象外なので注意しましょう。
塗装の重ね塗りや材料の追加
既存の塗装の上から新たに塗料を重ねる場合や、壁材などを追加するだけの工事で既存部分を損傷しない場合は、アスベストの事前調査は不要です。一方で、既存塗装の剥離やアンカーの打ち込みなど、影響が及ぶ場合は調査が必要になります。
2006年9月以降に建設された建物
2006年9月1日以降に着工された建築物については、基本的にアスベスト含有建材の使用がないとされているため、書面調査のみで十分とされています。目視や分析調査を省略できるため、比較的簡易な手続きで済むのが特徴です。
アスベスト事前調査は専門業者へ!依頼時のポイント
アスベスト事前調査は、専門的な知識と資格が必要なため、専門業者への依頼が一般的です。以下では、専門業者に依頼する際のポイントを4つに分けて解説します。
Webで複数社を比較する
近年は、ホームページを開設している専門業者も多く、Webから問い合わせや見積もりが可能です。業者によって費用や対応エリアが異なるため、複数社を比較しましょう。サイト上でスタッフの資格保有状況なども確認できると、より安心して依頼できます。
スピードも重視する
アスベストの調査結果が出るまでは、工事を進めることができません。そのため、結果が出るまでの期間も業者選びの大事なポイントです。調査の正確さはもちろん、スピードも重視しましょう。中には最短3営業日で結果が出る業者もあります。
有資格者が在籍しているか確認
アスベスト事前調査は、一定の資格を持った技術者しか行えません。全員が資格を持っている必要はありませんが、有資格者の人数が多いと調査がスムーズに進みやすくなります。業者の紹介ページなどで、資格者の在籍状況を確認しておくと安心です。
実績のある業者を選ぶ
業者選びに迷った場合は、調査実績の多い会社を選ぶのも有効です。実績の多さは、それだけ多くの依頼を受けてきた証拠でもあり、経験値の高さにもつながります。口コミや事例紹介が掲載されている業者は、信頼性の判断材料になります。
まとめ
アスベスト事前調査は、建築物の安全な解体や改修工事を進める上で欠かせない重要なステップです。まず、基本の流れを理解することが安全対策の基盤となります。一方で、木材や金属など明らかにアスベストを含まない素材の工事や、軽微な損傷で済む作業など、調査が不要となるケースも存在します。こうしたケースを正しく見極めることで、無駄な手間やコストを抑えることが可能です。また、調査は専門性が求められるため、資格を持つ専門業者に依頼することが大切です。依頼先選びでは、複数社の比較や調査スピード、有資格者の在籍状況、実績の有無を確認し、信頼できる業者を選ぶことが安心です。安全かつスムーズな工事のために、アスベスト事前調査の基本知識を押さえ、適切な対応を心がけましょう。