
アスベスト(石綿)を扱う作業には健康被害のリスクがあるため、法律で定められた資格の取得が義務付けられています。適切な知識と技能を持たないまま作業を行うと、重大なトラブルにつながる可能性が高いです。そこで本記事では、アスベスト作業に従事する際に必要な資格を3つ紹介します。
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アスベスト作業に必要な資格①「石綿作業主任者」
アスベスト除去作業に従事するには、法令で定められた資格を取得する必要があります。中でも「石綿作業主任者」は、作業現場を安全に管理・監督するうえで欠かせない資格です。ここでは、その役割や講習内容、取得方法について詳しく解説します。
石綿作業主任者とは
石綿作業主任者は、2006年に導入された国家資格で、アスベスト除去作業において現場の安全管理や作業計画の立案を行う重要な役割を担います。アスベストを取り扱う事業者は、必ず1名以上の石綿作業主任者を選任する必要があると法律で定められており、作業の中核を支える資格です。
取得に必要な講習内容
この資格を取得するには、約10時間におよぶ「石綿作業主任者技能講習」を修了し、修了試験に合格する必要があります。講習は通常2日間で行われ、1日目は健康被害や作業環境改善に関する講義、2日目は保護具や関連法令について学び、最後に試験が実施されます。
試験の難易度と注意点
修了試験は各科目40%以上、全体で60%以上の得点で合格となります。合格率は90%を超えており、しっかり講習を受けていれば難しくありません。しかし、万が一不合格になった場合は補習講義の受講と追試験が必要で、再度不合格となると新たに申込み直す必要があるため注意が必要です。
アスベスト作業に必要な資格②「石綿取扱作業従事者」
アスベストを含む建材に直接触れる作業を行うには「石綿取扱作業従事者」の資格が必要です。この資格は、安全に作業を行うための基本的な知識を身につけることを目的としています。ここでは、講習の内容や取得方法、主任者資格との違いについて解説します。
実務に必要な基本資格
石綿取扱作業従事者は、アスベストを含む建材を運搬・撤去する作業に従事するために必要な資格です。資格を持たずに作業を行った場合、事業者に罰則が科されるため、取得は義務となっています。現場で作業する従業員一人ひとりが対象となる重要な資格です。
講習と取得の流れ
この資格は18歳以上であれば誰でも取得でき、実務経験は不要です。特別教育講習を1日(約4.5時間)受講することで修了となり、試験や実技もありません。オンライン講習も可能なため、スケジュールに合わせて取得しやすいのが特徴です。
主任者資格との関係
石綿作業主任者の技能講習を修了している場合は、石綿取扱作業従事者の講習は免除されます。そのため、将来的に作業現場の監督や計画業務も視野に入れている場合は、主任者資格の取得を優先するのがおすすめです。両資格の違いを理解し、業務内容に合った選択をしましょう。
アスベスト作業に必要な資格③「石綿含有建材調査者」
アスベストの適切な除去には、事前調査による正確な情報把握が欠かせません。2023年10月以降の工事では「建築物石綿含有建材調査者」による調査が義務づけられました。以下では、その役割や種類、資格取得の流れについてわかりやすく紹介します。
調査者が必要な背景
2023年10月から、建築物の解体や改修の工事では、事前に「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者による調査が義務化されました。これにより、アスベスト含有の有無を正確に把握し、作業時の健康被害や法的リスクを回避する体制が整えられています。
資格の種類と特徴
この資格には「一般」「特定」「一戸建て等」の3種類があります。一般はすべての建築物が対象で、講義と筆記試験を経て取得します。特定は試験が多く、口述や調査票試験もありやや難易度が高めです。一戸建て等は対象が住宅内部に限られており、共同住宅の共用部には対応していません。
取得方法と合格率
講習時間は種類によって異なりますが、一般の場合は11時間の講義後に筆記試験を受けます。合格率は60〜90%とされ、真面目に受講すれば十分に取得可能です。特定は試験の種類が多くやや難易度が上がりますが、確実に需要が高まっている資格であるため、今後の備えとして取得を検討する価値があります。
資格なしで携われるアスベスト関連業務とは?
アスベスト作業には専門資格が必要な場合が多いですが、すべての業務で資格が求められるわけではありません。建築物のアスベスト使用有無を書面で確認したり、資格保持者が実施した調査結果を報告する業務は資格なしでも携われます。以下では、そんな資格不要の業務についても知っておきましょう。
書面での確認は資格不要
建築物のアスベスト使用について、現場調査を行わず書類や設計図面などで確認できる場合は、資格は必要ありません。2006年9月1日以降の建物はアスベスト使用が禁止されているため、それ以降に建てられた建築物であれば安全と判断でき、調査資格がなくても取り扱えます。
調査結果の報告業務も可能
資格保持者が行った調査や分析の結果を基に、報告書を作成・提出する業務についても資格は不要です。調査自体は専門家に任せ、結果の取りまとめや連絡役として関わることは、資格なしでも対応可能です。
まとめ
アスベスト作業に関わる業務には、それぞれの役割に応じた資格取得が法律で義務付けられており、安全確保や健康被害の防止に欠かせません。石綿作業主任者は現場の指揮監督を担い、石綿取扱作業従事者は実際の作業を行います。また、石綿含有建材調査者は解体前の事前調査を専門的に行う重要な役割です。一方で、書面確認や調査結果の報告など、資格なしで関われる業務もあり、現場外でのサポート的役割も存在します。適切な資格を理解し、役割に応じて確実に取得することが、安全で効率的なアスベスト対策につながります。